◆契りは未だ朽ちせざりけり◆(匿名希望N様)
木曽義仲&今井兼平
今井四郎兼平も…主の行方のおぼつかなさに、都の方へ上る程に、大津の打出の濱にて、木曾殿に行き合い奉る。
中一町ばかりより、互いにそれと見知って、主従、駒を早めて寄り合ひたり。
木曾殿、今井が手を取つて宣ひけるは、
「義仲、六条河原にて、いかにもなるべきしかども、 汝が行方のおぼつかなさに、多くの敵に後を見せて、 これまで遁れたるはいかに」
と宣へば、今井四郎、
「兼平も勢田にて討死に仕るべう候ひしかども、 御行方のおぼつかなさにこれまで遁れ参って候」
と申しければ、木曾殿、
「さては契りは未だ朽ちせざりけり…」
巻九 木曾の最期の事
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